こんにちは!茨城県守谷市古谷歯科医院、古谷 容です。
ご存知与太郎さんはデンタルドックの三回目を受け、将来の青写真を知ってしまいました。
とりあえず大家さんにご報告ということで、なにやらまた一杯やっているようです、本当にしょうがないですね(笑)。でもなにやらお悩みのようですよ。どうしたんでしょう。今日も長くなりそうですよ(笑)。
「まったくなんです与太郎さん、昼間っからこんな所に呼び出して」
「いえね大家さん、今日は祝杯でもあげようと思いまして」
「えっ、祝杯?何にです?」
そこへ中居さんがアツアツの二合徳利を二本持ってきました。与太郎さんは大家さんに、そして自分の猪口に注ぐと、
「アチチ、熱燗はこうじゃなきゃね、火傷しそうだぜ、じゃあ大家さん一つどうぞ、それでは乾杯ということで」
「与太郎さん、なにに祝杯を上げるんです?(アチチ、本当に熱いねこの燗は)」
「ほかでもね〜んですが、ほらあのデンタルドックってやつですよ、大家さんが教えてくれた」
「ほ〜、そのデンタルドックがどうしたんです?(私はちょっとぬるいのが好きなんですがね)」
「受けてきたんですよ、ほんで、今日がその三回目」
「いやぁ〜与太郎さん大したもんでしたね、三回目ですか今日が、そうでしたか、じゃぁ祝杯だ、それは良かった良かった、それにしても良く思い切りましたね、それでどうでした、結果は?先生はなんて言ってました?大丈夫って言ってました?それとも・・・」
「何ですかそれとも・・・って、そんなこと言ってませんでしたよ、まったく、人をおもちゃにしないでくださいよ」
「悪かった悪かった、別に悪気があるわけじゃないんですよ」
「じゃあなんです?」
「いや、先生なんて言ってたかなってね、それだけですよ(笑)」
「酒の肴はそのきびなごの唐揚げだけにしてくださいよ、まったく」
「はいはい、ではいただきますよ、与太郎さんもどうです熱い内に」
何とも話が本題に入らない二人です。しばらく熱いのをやりながら季節の香のものや焼いたホッケなんかをつっつきながらチビリチビリと重ねていくのでした。
「左官の熊さんが嫁をもらうのもらわないのって話で町内持ちきりですが、大家さんご存知ですか?」
「何いってんですか、知ってますよ、その娘さんを引き合わせたのは、この私なんですから」
「えっ、そうだったんですか、そりゃ、失礼しました、知りませんでした。それで結局はどんな塩梅なんです?」
「どんな塩梅もこんな塩梅もないんですよ。熊さんたらあ〜でもないこ〜でもないって、いつまでたっても決まらないんですよ。私も先方に早く返事をしたいんで催促はしているんですがね、困ったもんです」
「そうだったんですかい、それで皆やきもきして盛り上がってんですね。でも独り身が長いとね、分かっちゃいるんでしょうがどうも腰がね、お袋も抱えてるし(気持ちは分かるぜ)」
「と云うか与太郎さん、今日はそんな話ししに来たんじゃないんでしょ?」
「あっ、そうでした、ついつい話が余計な方へ行っちまって・・・そうそうデンタルドックの話でしたね、あっしとしたことが」
「頼みますよ、私だって暇じゃないんですから」
と云いながら中居さんに向かって“パンパン”と手をたたく大家さんでした。
「いえね大家さん、先生はね、大丈夫だって言ってくれてるんですよ」
「それは良かったじゃないですか、大丈夫ですよ、先生がそう言ってくださってるんでしたら」
「そうなんですがね・・・」
「どうしたんです?何か心配なことでもあるんですか?」
「いや、心配ってほどじゃないんですが・・・」
「じゃぁなんです?」
「あまりに口中の歯がやられてるんでね、治療が終わるのに長いことかかるんですって。それに・・・」
「それになんです?」
「それにね、お足が払いきれるかってね・・・先生んところは何でも“自由診療”とかで、保険が効かないっていうんでしょう?」
「あら与太郎さん、いま更何いってんです?そんな事は、はなから分かってることでしょ?分かってて診てもらったんじゃないですか。はじめにそう言ったじゃないですか、保険診療じゃないけどいいですか、って。あんたの口は他の普通の歯医者の先生じゃ手におえないんですからって、そう言いましたよ、憶えてないんですか?先のこと考えたら絶対にお得だって、私を見てくださいよ」
「えっ?」
「私もね若い時分はあなたほどじゃないけどね、ずいぶんと遊んでたもんですよ、それでねお決まりのように歯も悪くてね、えらく苦労したんです」
「へ〜知りませんでしたよ、そんなこと」
「そうですか」
「それでどうしたんです?」
「それでね、縁があったんでしょうね、先生に出会ってね、それこそデンタルドックですよデンタルドック。それから口中治療して、そうですね、終わってからもう20年は経ってますよ。メンテナンスにはおじゃましてますけれどね」
「そうだったんですか・・・20年ですか、20年なんともないんですか?」
「なんともないですよ、いいですか与太郎さん、人の口はね、健康を取り戻してね、そしてそれを維持して行くためにね、きちんとした治療とその後の管理を受けるだけの価値があるんです。つまり質の高いCureと心のこもったCareね(受け売りだけどちょっと難しいかな?)。分かりますか?だってそうでしょ?与太郎さん言ってたじゃないですか。歯の具合が悪いんでおまんまが上手く食えないって、歯が沁みたり痛かったりで仕事にも障りが出て親方に怒られるって、かみさんにもうるさいって言われるって、与太郎さんそう言ってたじゃないですか。よ〜く考えてみてくださいよ、もしね、今回先生に治療してもらってあなたの歯がね、快調になってスッキリしてね、おまんまがなんてことなくいただけるようになって、仕事もガンガンこなせて、親方に褒められてね、仕事をどんどん回してくれて、お給金も増えるってことになるんじゃないですか、だってあなた、腕はピカイチなんですから、親方この間そう言ってましたよ、もったいね〜んだって」
「・・・・」
「なにかお言いなさいな」
「確かにそうですね、そうか、歯が良くなって、歯のことなんかに煩わせられることがなくなって、体調も良くなり、仕事ががんがんできるようになるってことですね、大家さん?そうすれば昔みたいに稼げるって寸法ですね?」
「そうですよ、それにそれだけじゃないですよ、おまけもありますよ、おまけが(笑)」
「おまけですか?」
「そうですよ、何よりみねちゃんが喜びますよ」
「女房がですか?なんでかか〜が喜ぶんです?」
「そりゃあそうですよ、考えてもみなさいな、いいですか、ちょっと前まではね、与太郎っていやぁ、この界隈じゃ一番の腕効きですよ。その腕利きがね、その腕でバリバリ働いてね、しっかりとお給金を稼いできたのに、どうですか、今となっては、歯がどうのこうのと言ってばかりで、せっかく作ったおまんまも食べてもらえなくてね、酒ばっかり飲んでグダグダ言って、仕事も今は昔ってことじゃぁ、みねちゃんも機嫌が悪くなって当然じゃないですか、与太郎さん!どうなんです?そろそろ子どもだって欲しいと思ってるんじゃないですか、みねちゃんは、違いますか?(まったく何も分かってないんだから・・・)」
「・・・・・」
大家さんのありがたいお説教にぐうの音も出ない与太郎さんでしたが、“それもそうだな、確かに大家さんの云う通りだな、さすが大家さんだぜ”って思い始めたようです。こんなオレのためにこんなに一所懸命話してくれて、心配してくれて、女房のことまでね。ありがたいことだな。“オレは幸せ者だ”と少ししんみりとしてきた与太郎さんでした。そして、
「その通りです、大家さん、弱気なこと言って申し訳ありませんでした。本当に背中を押してくれてありがとうございます」
と言おうとして顔を上げ、大家さんの顔を見た与太郎さんは、口をあんぐり開けてしまいました。なんと大家さんは猪口を片手に寝ているではありませんか。
“昼間っから少し飲みすぎたのかな?今日はオレが払うか、まっ、それもいいか、たまにはな、いつもごちになってるしな。それに今日はありがたい話しも聞けたし・・・籠でも呼んでやるか・・・それにしても大家さんも口中治療してたとはな・・・”
パンパン
「おねえさん、勘定たのむよ、それと籠もな、急いでくんな、たのむよ!」
“今日はまだ早いし明るいけど、家に帰〜るか。大家さんの話ももっともだし、それにあの真剣さにちょっとじ〜んと来ちゃったしな。ありがたいことだな、本当に。帰〜って女房に今日の事を話してみるか「歯を治してまた昔みて〜にガンガン仕事もするし、おめ〜の作ってくれたうまい飯も食えるようになる」ってな、言ってみようかな、喜ぶかな?それに子どもの話もな・・・”
ってな感じで与太郎さんは、大家さんの後押しもあり、お口の健康を手に入れるための第一歩を踏み出し、いよいよ治療に入るようです。酔った勢いではないことを祈っていますが(笑)。
では、本日はこの辺で失礼致します。今回も長くなりまして、恐縮しています。ここまで読んで頂けた方、本当に有難うございます。よっぽど暇で、奇特な人もいたものですね、あっ失礼いたしました(笑)。
おあとがよろしいようで!